ハーレーダビッドソン、大丈夫か?

ぶっちゃけ昨今、そんな声を時折耳にする。

その主たる理由は電気モーターバイクの販売を開始しエレクトリックの開発を加速したり、60度の水冷DOHCエンジンでビッグオフローダーを筆頭とする新ファミリーのラインナップを発表したり、中国企業に生産委託してミドルクラスの廉価版モデルを発表したりというカンパニーの企業姿勢を案じてのことだ。

ちなみにハーレーを案ずる声の主には、食わず嫌いの“旧車最高現行否定”派も少なくない。現行車はつまらない、電動などけしからん。こうした人たちは特に日本に多いのだが、アメリカの老若男女を問わないバイカーやチョッパーガイから最新モデルを否定する声を聴いた記憶はほとんどない。「今のハーレー? 最高に決まってるだろ」。これこそハーレーダビッドソン愛、だ。メイドインアメリカのプライド。

なにより声を大にして言っておきたいのは、ハーレーダビッドソンが現在ラインナップする様々なモデルはいずれも素晴らしい出来栄えである、ということ。

まずはミルウォーキーエイトというパワーユニットについて。

俺はEVOが発売されて間もないころから毎年、メーカーの新車発表会に参加している。発売されたばかりのエボリューションは、それまでのショベルヘッドに較べれば質感も大きく向上したのだが、肝心なパワーについて言えば“非力”。1340という超大排気量が発するイメージからすれば、世のモーターサイクリストのほとんどは物足りなさを感じたはずだ。

しかしEVOのポテンシャルは相乗以上のものだった。キャブとマフラーを変えてやるだけでものすごくパワフルなバイクに豹変したし、カムを入れたりS&Sでボアやストロークを大きくしてビッグパワーを絞り出しても、それまでのショベルヘッドのように不具合に見舞われる確率は著しく減った。マフラーを変えてストックのCVキャブをセッティングしてやるだけでも「これぞハーレー」と思うに足るパワーを出せる。簡単に劇的に速くなる、というのはハーレー以外(特に日本車)ではなかなか味わえない楽しみ。日常トラブルの激減と相まって、ショベル時代に記せられた「遅い止まらない壊れる」という汚名が払しょくされ、日本におけるハーレーブームが勃興した。

ストロークよりもボアを大きくして排気量を稼ぐという選択で開発されたツインカムの登場は1999年。排気量アップによってパワーはEVOより進化したが、やはりビッグボアゆえに薄まった鼓動感は致し方なし。そのまま走らせるには物足りないことに変わりはなかった。しかしTCの登場から8年後に発表されたツインカム96を走らせた時、「オッ!」と思ったことを覚えている。これ、イイかも。TC96は俺にとって、当時20年近かった新車試乗会史上初めて「吊るしで過不足なし」のモデルだったのだ。しかも1450から1580への130cc分はボアではなくストロークアップ分。さすがハーレーダビッドソン、よく分かってる(上から目線で失礼)。

この時点で車重の重いフルドレッサーはまだ不足感が残ったが、11年にツーリングファミリーがTC103となって過不足なしに。そして2016年に発売され世界的ヒットとなったご存知ローライダーSは、110=1101800ccのスクリーミンイーグルエンジンを搭載し、新車のままで強烈極まりないパワーを発揮。足回りを含め、そのパフォーマンスは各国の同クラスクルーザーの中でトップクラスといってよい。

1903年の創業から、ハーレーダビッドソンはメカニズムやパフォーマンスという意味において世界最先端のモーターサイクルメーカーだった。そうした時代はナックルからパンヘッド登場に至るあたりまでは続いたが、69年のホンダCB750FOURを皮切りにメイドインジャパンが世界を席巻するのと時を前後して「巨大でノスタルジックな高級バイク」へと変貌。しかしローライダーSはハーレーダビッドソンを再び「世界最高レベルのクルーザーメーカー」へと返り咲かせたと言っていい。その間、半世紀。

ミルウォーキーエイトは正直言って、文句の付け所が見当たらない。本当はこんな書き方はしたくないのだけれど、他にうまい言い方が見当たらない。

パワーは十分。しかも数年前に行われた法規制の変更により、今や排気音も十分なのだ。もしミルウォーキーエイトを手に入れたら、当分は吊るしのままで満足。マフラーさえノーマルでいい。30年以上ハーレーと付き合うモータージャーナリストの端くれたる俺にとって、これは衝撃的な出来事だ。世の中は変わってる。進んでる。

進化はエンジンばかりではない。新しいソフテイルのシャシーはすごく良くできている。旧車のシルエットとディティールを再現することを目指した初代ソフテイルに対し、走りを重視したスポーツバイクとしてのモノサスを開発した新ソフテイル。初代の鋳物ラグ組みを廃してパイプを直接溶接する手法はダイナグライドそのものだし、ソフテイルの名前は引き継いだが “モノサスになった新ダイナ”という方がしっくりくる。剛性が高く動きもコシがあって滑らかなフロントフォークと相まって、足回りのポテンシャルは極めて高い。

ツーリングファミリーは2014年のプロジェクトラッシュモアで新たに設計されたシャシーが投入され、剛性感が飛躍的に向上。以前のツアラーは高速道路で120キロを超えるような速度域で大きなアールのコーナーに差し掛かると、シャシーがヨレているのを感じたものだった(恐怖を感じる類いのものではないからそのままスロットルを開けていても不安はなかったのだが)。しかし現行のツアラーは150キロでもビシッと安定したまま。これからミルウォーキーエイトがさらに大排気量化/パワーアップして行っても問題なく受け止めるだろう。

スポーツスターについては言うまでもない。俺が1986年に発売されたばかりのEVO883を新車で購入して以来、基本構成をまったく変えないままの現行EVO エンジンには、いとおしさすら感じている。コゴトを言うのであれば、ソリッドカラーでメッキやブラックパーツも少ない(好みで言えば19/16スポークの)ベーシック(つまり廉価)モデルをラインナップに加えてほしいという位か。

 HBJの読者諸兄を含め多くのハーレーオーナーが眼中にないだろうストリート750にしたところで、非常によくできたオートバイだ。クルーザーではなくスポーツバイクとして満足できるパワーがあり、日本人の一般的なモーターサイクリストにとってジャストサイジングで、熱くなってコーナーを攻めてもすこぶる楽しい。世界のワンオブベスト・ベーシックスポーツだと俺は思っている。ナナハン、という今やノスタルジックな響きも良いし、ベーシックモデルが87万円ほどという価格も悪くない。

ただひとつの(大きな)問題は、売れるか売れないか、だ。750の顧客層が従来のハーレーダビッドソンユーザーでないことは明らかだが、これまでハーレーダビッドソンに興味のなかったモーターサイクリストをどれだけ振り向かせることができるかと考える時、それはいばらの道に見える。

2019年モデルの話題で欠くことのできないのは、電動バイク「ライブワイヤー」。残念ながら俺はまだ走らせていないし日本では未発売だが、実際に海外で乗った声を聴くとすごく完成度が高いことは間違いなさそう。なんでハーレーダビッドソンが電動バイクを? と否定的なバイカーも少なくはないだろうが、ハーレー社のこの新しいチャレンジと、それを世界に先駆けて発売(日本や欧州をさておきハーレーが、だ)した企業力は素晴しいと思う。売れるか売れないかと聞かれれば、「売れてほしい」と答えたい。乗ってみたいことは間違いない。

電動では他にもマウンテンバイクのようなオフ車やシティークルーザーをコンセプトモデルとして公開しており、どちらもハッとするほどカッコいい。オフモデルはXゲームのスターライダー、ジャクソン・ストロングが雪のアスペンで走り回るオフィシャル動画が公開されており、こんなのが発売されたらマジ欲しい。現実的に40万円台後半あたりまでのプライスなら真剣に考えちゃうだろう。

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